記憶に消えないように刻まれた

他の諸観念が、意味ではなく言葉それ自体が理由で鼠コンプレックスにつけ加わった。その言葉は分割払いを意味し、思考の性質あるいは他の半分はいかに思考するのか銀貨との同一視につながる。それは賭博を意味し鼠男の父が借金を重ねて賭博をしていたこともあり、鼠コンプレックスへと組み込まれるようになる。フロイトはこれらの結びつきを、言葉の橋、と呼んでいる。それらは完全に言葉の間の文字上の関係に由来するものなので、それ自体では何も意味しない。それらが支払いに関わる症状的な振る舞いを引き起こしている以上、鼠男を従属させているのは、意味ではなくシニフィアンそのものなのである。鼠男が両親の会話の一部を小耳にはさみ、それを理解するにはまだ幼すぎたにもかかわらず、それが記録され、彼の記憶に消えないように刻まれたと想定しよう。鼠男が小耳にはさんだ会話の一部は、そこでそれ自身の生命を担い、他の盗聴きされた文字、それは、鼠男が見たり聴いたりすることを意図されていなかったのに、実際に目撃されてしまった光景であったり、小耳にはさまれた言葉である、との結びつきを形成したのである。